初めての嫉妬
小学高学年にもなるとだんだん異性へ興味が沸いてくる頃。
女子は男子よりもませているのでなおさらその傾向が強い。
ここ最近の女子の話題は『コイバナ』が主だ。
今日もクラスの誰が一番好きかというテーマが熱く繰り広げられていた。
まだ男の友達と遊んでるのが一番。という年頃の阿含は別にそんな話題に興味なんてなかったが「雲水くんて意外とかっこいいよね」という言葉に思いっきり反応し耳がダンボになった。
「雲水くんってさ、他の男子と違って落ち着いてて、しかも優しいしさ」
少々興奮気味に一人の女子が言うと周りの女子も一様に「わかる。わかる」と首を大きく縦に振る。
(雲水がかっこいい?)
クラスの女子のその言葉に大きく頭を殴られたような衝撃が阿含を襲った。
「誰か付き合ってる子いるのかな?」
「え〜、わかんない」
「告ってみれば?もしかしたらうまくいくかもよ!」
彼女達のテンションはもうピーク。
話しの内容は『誰が一番好きか』という話題から『いつ、誰が雲水に告白するか』という話題へと変わっていた。
雲水への告白。
その話題を耳にした阿含は怒りを押さえきれずゆっくりと女子達に近づき、皮肉をたっぷりと込めて言った。
「雲水がお前らみたいなブスと付き合うはずねぇだろ。告白する前に鏡見てみろバーカ」
あまりのセリフに固まる女子、そして『クラスの女子全員を敵に回すなんて…』という男子の尊敬と哀れみを込めて見つめる男子。
阿含はそんな様子をふんと小さく鼻で笑うと教室から出た。
「阿含。むかつく〜〜〜〜!」
阿含が出ていった後、クラス女子全員の絶叫が廊下に木霊したのは言うまでも無い。
☆☆☆☆☆
家に帰ってからも阿含の苛立ちは解消される事はなかった。
ずっと昔から俺の一番は雲水で雲水の一番も俺だと思っていた…嫌、これからもそうだ。
ただのクラスの女子に雲水を横から取られるのなんて冗談じゃない。
そして雲水はある一大決心をしたのだった。
俺はどんな雲水でも大好きでいられるけど、クラスの女子どもは違う。かっこいい雲水が好きなんだ。…てことはつまり、かっこ悪い雲水には興味がねぇ。
(善は急げ!早速今夜作戦実行だ!)
その言葉通りその日の夜。
阿含はみんなが寝静まった夜中こっそりと起き寝る前にあらかじめ準備しておいたある物を片手に雲水のベッドへと近づいた。
「お前の良い所は俺だけが知ってれば十分だよな」
上機嫌に呟き阿含は無事作戦を完了させたのだった。
☆☆☆☆☆
次の日の朝…。
「な…な…なんだ、これは〜〜〜〜〜〜!」
雲水の叫び声で阿含は目を覚ました。
「こんなくだらない悪戯するのはお前だろ!阿含!」
少し涙目になった雲水がまだ寝ぼけ眼の阿含につめよる。
「あ〜…雲水おはよ」
「おはよ。じゃない!これはどういう事だ!きちんと説明しろ!」
雲水は自分の頭を指差し怒鳴る。
「お兄ちゃん思いの優しい阿含くんが雲水くんを華麗にイメチェンしてあげたんだよ」
欠伸を噛みつつ言うと、顔を怒りで真っ赤に染めた雲水に思いっきり殴られた。
寝ている最中に頭を綺麗に丸められたら誰だって怒る。雲水の怒りは至極当然の事だ。
「すっきりしてかっこいいよ。お兄ちゃん」
殴られた頭をさすりつつ言うと今度は右頬に強烈ストレート。
「阿含の馬鹿野郎!」
そんな捨てセリフをはいて部屋から出ていった雲水。
「…………」
閉められたドアを見ながら阿含はため息をひとつつきベッドに倒れこんだ。
「本当の理由なんてかっこ悪くて言えるかよ」
顔を真っ赤に染めた阿含は布団をかぶり、『雲水の馬鹿』と小さく呟いた。
始めは丸刈りにされた事を怒ってたけど、寝癖もつかないし意外と楽かも!と思い雲水はそれ以降ずっと坊主をキープしている…間違いない!
…すいません、夢見すぎです。
お願いだから石は投げないで下さい…
戻る
|